日本人の美意識と現代のインテリアの課題

六本木の国立新美術館で開催していた『独立書展』(書道展)に行ってきました。

母が作品を出品しており、両親と夫の4人で見に行ってきました。
60才を超えて新しいことに挑戦する母にはいつも刺激を受けています。

書道展

書にはいろんなスタイルがあって、詩や唄を描いたり、抽象画のような作品もあります。

白と黒だけなのに、
墨で表現できる世界は無限大。

かっこいいです。
書道展

美術館や展示会、ギャラリーで作品を見るときに、私は必ず「この作品はどこにどのように飾ったら素敵か?」という視点でみます。

「”床の間”に古典的な生け花と飾るのが最も似合う」
「デンマークのビンテージチェアとフロア照明と一緒に飾ったら素敵だろうな」
「和モダンなホテルのエントランスにぴったり」

そんな風に考えながら作品を観ています。

こういう視点でみると、
サイズ・デザイン・バランス…いろんなところに意識がいくので、ただ漫然と眺めるよりも感覚が鍛えられるのです。

 

書から感じる日本の美意識

書を見ながら感じたこと、
それは「余白」を大切にしているということ。

「余白」って日本の美意識だと思うんです。

書道展

私は4年間生け花を習っていますが、
先生からいつも言われることが「余白を作ること

埋め尽くさないように
空間をつくるように

そのために、あえて枝を切ったり曲げたり、葉や花をとったりして余白をつくります。

そしてもう一つ重要な点が「左右対称」であること。

左右対称」と「余白

これが日本人が美しさを感じる部分です。

 

昨日のブログでイギリスのインテリアをご紹介しました。
西洋のインテリアの基本は「左右対称(シンメトリー)
そして余白を埋めていく「装飾」が基本的な考え方です。

壁紙、アート、ファブリック(生地)、家具や置物で空間を左右対称に装飾することが美しいとされていますし、ヨーロッパの人は得意です。

庭園を見ても
ヨーロッパのお城の庭園は左右対称。
日本はあえて左右対称に作りこむ。竜安寺のような余白のある姿を美しいと感じます。

 

西欧と日本では美意識が根本的に違う。

それを「書」や「生け花」からも感じることができます。

 

ただし余白は、ベースが美しいからこそ映えるもの

リバーリトリート雅樂倶
(富山のアートホテル「リバーリトリート雅樂倶」にて)

日本人は「余白」を美しいと思い、
シンプルが美しいと感じるから、
インテリアもシンプルなもの、ミニマルな生き方が受け入れられるのだと思います。

欧米のように、オリジナリティあふれる装飾をインテリアに施す人は少数です。

ただし認識しておくべきことは、
余白にはベースの美しさが不可欠。
ベースが美しくメリハリがあるからこそ、余白の美しさが引き立つのだ
ということ。

「書」は深い黒い墨の色があるからこそ余白が引き立ち、紙のシワをきれいにとって額装したり掛け軸に仕上げるからこそ美しくみえる。

「生け花」は枝の曲線や葉や花の動きがあるからこそ余白が引き立ち、美しい花器に生けるからこそ全体の美しさが際立つ。

このメリハリとベースの美しさがすごく重要。

リバーリトリート雅樂倶(富山のアートホテル「リバーリトリート雅樂倶」にて)

 

インテリアも同じです。

アートがあるからこそ、余白の美しさが際立つし、
照明で照らすからこそ、空間に雰囲気と奥行がでます。

リバーリトリート雅樂倶

しかし現実にはどうでしょうか。
特に都会の賃貸マンション、大手ハウスメーカーのお家

・白い量産ビニールクロスに
・梁が大きく突き出た天井
・むき出しの白いクーラー
・シーリングライトがまぶしく照らし
・お部屋にあるのは無印とニトリとベルメゾンで買ったシンプルな家具とカーテンのみ
・壁にアートは一切飾らない

確かに「余白」はある。

というか「余白」ばかり。

そしてベース自体があまり美しくない。

こんなことが普通に起こっているのではないでしょうか?

私もインテリアの仕事をしていて「あぁ…ベースが本当に良くない」「改善するところがいっぱいあり過ぎる…」と思うことが多々あります。

これは戦後の日本の急激な生活様式の西洋化や、住宅産業の構造にも起因しているのですが、ちょっと貧弱で悲しい状況。

 

インスタで海外のインテリアをみては、
素敵だなぁ、いいなぁ。
でもやり方分からないし、絶対かなわないし、自分達には無理だよ。
そんな風に思って諦めている方多いのではないでしょうか?プロの方でも多いのでは!?

 

「書」の話で申し上げたように、日本とヨーロッパは根本的な美意識が違う。
流れるDNAも違う。
美意識も、伝統も、考え方も、家の在り方も異なるから
「海外のインテリアこそが素晴らしい」
「海外のインテリアをそのままマネしよう」
とは私は全く思いません。

「ヨーロッパみたいなインテリアが作れないから、日本のインテリア業界はダメなんだ」なんてことを言われると、「はぁっ!?」って思います。

だって違うんだから!

…とは言え、海外の良いところは謙虚に取り入れるべきだし、ダメなところはどんどん直していくべきだと思う。

金太郎飴みたいな間取りのマンションを生み出すディベロッパーはどうにか変わってほしいし、壁に一切穴を開けるな、画鋲一つも刺してはならないと言う不動産はどこかに消えてほしい。

 

消費者も「自分が何を美しいと思うのか」「自分は何に心地良いと思うのか」もっと意識を磨くべきだと思う。

そしてインテリアを提案する私自身も、もっともっと成長していかなければならないと感じています。

海外から学べること、日本の伝統から学べること、歴史から学べること…謙虚に学んで咀嚼して、自分なりのオリジナリティあふれる提案をしていきたい。

日本の人々が、美しく心地良く感じるインテリアを、現代のライフスタイルに合った方法で提案していきたい。

それが今の目標です。