SNSが広まり海外の映画やドラマを日常的に視聴できるようになった昨今、多くの人は気が付いていると思います。
「日本の家のインテリアって、欧米に比べてショボくないか?」と。
日本の伝統的な和室はとても美しいですよね。
床の間には設えがあり、襖には模様が描かれ、障子を通る光は繊細です。
畳や土壁のテクスチャーは素晴らしいですよね。世界に誇るべき日本の文化だと思います。
でも日本の”現代のお家”はどうでしょうか?
正直海外に比べて、残念な家が多いのではないか…というのは、実際に事実だと思います。
インテリアに対する意識の高さ、スキルのレベル、商材の豊富さも、欧米諸国の方が上というのは、おそらくインテリア業界にいる多くの人が認識しています。だいたい同業者で集まると、このネタになりますね。
現代の日本の家は良くも悪くもすっきりし過ぎ、そして使い捨て製品に溢れている家が多いと思います。
・アートも何も飾らない白いビニールクロスの壁
・大量生産の無個性な家具
・天井照明一個で部屋を煌々と照らす
・テレビやエアコンが部屋の最も良い場所に鎮座
・インテリアがみんな似てる(個性がない)
一方でSNSやネット、ハードカバー本、そして実際に現地に行ってみると、欧米の家は色に溢れ、壁にはアートが飾られて、様々なスタイルがあります。個性的なインテリアでどんな人が住んでいるかをパッと見てイメージできるのです。
だいたい欧米の刑事ドラマを見ていると、低所得者地域の犯罪者の家の方が、日本のプチ富裕層のインテリアよりおしゃれなことが多いです。ドラマのセッティングですがある程度は現実に基づいているでしょう。
それはちょっと寂しいですよね…。
なぜインテリアのレベルが低いのか
その理由はいくつもあると思いますが、私がこの仕事をしていて一番課題に思うのが「間取りの問題」です。
特に弊社は東京のマンションを中心にアート&インテリアコーディネートの仕事をしていますが、「家具を置けない間取り」が非常に多いです。
物理的には無理やり置けても、インテリアとして美しく機能的に置けないことが多いのです。
例えば、
■窓が広すぎたり変な位置についていたり、部屋が引き戸や扉に囲まれて、きちんとした壁がない
背景に壁がないと家具はおけません。
窓や扉に囲まれては、家具の置き所に困ってしまいます。
■何LDKや何㎡と数字ばかり気にした家を作り、狭い&変な形の部屋が多い
LDKの数字を稼ぐために、部屋が細かく細分化されすぎています。
また数字上のサイズは十分にあるけれど、部屋の形の問題で家具を置けない間取りが多いです。
この部屋の形で、どうやって、どの向きでソファセットとダイニグセットを置いたらいいんだろう?と悩む間取りが多いです。
先日お客様からお問い合わせがありました。
100㎡以上の大きなマンションなのですが、「リビングの間取りが難しくて自分では無理です」とのこと。
間取り図を拝見すると、リビングがカクカクと曲がり、柱が複数個所突き出た形をしているうえに、全面が窓になっています。
そもそもどこにテレビを置いたらいいの?
ソファはどの位置にどういう向きで置いたらいいの?
そんな基本的な家具配置に悩んでしまう間取りでした。
日本のインテリアのレベルがあがらない悪循環
おかしな間取りが多いことは以下のような悪循環を生み出します。
例えば、
■特別な間取りに合わせたサイズの家具を買わざるを得ない
↓
引っ越したらその家具は買い換える必要がでる
↓
だから「家具は買い替えの効く安いものでOK」という発想になってしまう
お値段以上で有名な家具量販店に高級車が何台も駐車している光景を良く目にしますが、車にこだわる人でも家具は「お値段以上」レベルでOKという発想になってしまうのです。それは寂しすぎる。
また
■窓が多すぎてアートを飾る壁がないので
↓
アートを飾らない
↓
だからアートの市場もアートを飾る意識も育たない
せめてソファの背景には、きちんとした壁があってほしいもの。アートを飾ることで、家に彩や個性も加えることができるのです。
さらに
■変な間取りの家でも理想のインテリアを叶えるために
↓
リフォームで間取りを大きく変える必要があり
↓
工事費に予算が割かれ、家具などのインテリアに十分投資できない
という流れも生じてしまいます。
「個性的で豊かなインテリアを作ろう」
ということにお金やエネルギーを注ぐ前に
「そもそもどうやって家具を置いたらいいの?」
という基本的なところで止まってしまうのです。
これは現場で良くマンションを見ているからこそ実感しますし、弊社にも「間取りが変わっているので家具配置をどうしたらいいのか分からない」というご相談が非常に多いです。
インテリア業界にいる一員として、このような現状は変えていかねばと強く思っています。
多くの方がもっと純粋にインテリアを楽しめて、個性的なスタイルにチャレンジできる社会にしていきたいです。