日本の照明の課題&ヨーロッパとの違い

インテリアの仕事をしていて「日本と欧米で質量共にレベルが違う」と一番痛感するのが照明です。
消費者もメーカーも、照明に対する意識の違いを強く感じます。

日本は天井照明が主流

日本はシーリングライトやダウンライトなど天井照明で主に部屋を照らします。
マンションに良くついているシーリングライト↓
大抵これ一つで済ませてしまう場合が多いです。
明るさは十分にあるのですが、逆に明る過ぎることが多く、意匠的にも味気ないですね。

シーリングライト

欧米は複数照明の組み合わせ

海外の映画やドラマを見ていて、家の照明が非常に暗いなと感じたことはありませんか。
テーブルライトの小さな光で読書をしたり、手紙を読んだり、そんなシーンをよく見かけると思います。

欧米では天井照明だけでなく、フロアランプやテーブルランプ、壁付照明、暖炉など、複数の光源で照らす方法が主流です。

特に緯度が高いヨーロッパでは、冬は夜の時間が長いですから、長い夜を柔らかく暖かな光でリラックスして過ごせるように、照明のデザインにも使い方にも工夫を凝らしています。

一方で天井が高いパーティー会場に豪華なシャンデリアをつけて、ドレスアップしてパーティーをしているシーンも見かけます。

ただ「明るくする」という機能面だけではない、照明の装飾的な役割も見ることができます。

Studio del Solケルン家具見本市

なぜ日本では天井照明が主流なのか

考えられる理由が、戦後の高度成長期に「明るいこと=豊かなこと」という視点で一般家庭に省電力で照らせる蛍光灯が広まったことが考えられます。
家族が過ごすリビングの中心に蛍光灯をつけて隅々まで均一に照らす、それが豊かな象徴。
戦後の日本には必要なことだったと思います。

そしてそれが現代の日本にも続いているのが実情です。
「天井についているシーリングライト1個で明るく」という空間構成になっているため、「テーブルランプやフロアランプを置く」という発想も必要性も感じない状態で今まで来ているのです。

日本の照明メーカーの問題

近年、光の効果などの研究が進み、暖かくリラックスした空間にするなら暖色系の光を、仕事に集中するなら寒色系の光を取り入れよう、という考え方が一般の消費者にも広まってきているように感じます。

また日本の照明メーカーも、調光・調色機能付きの照明、スマート電球などを充実させており、それ自体はとても良いことです。

ただ一方で、機能に寄った開発が主流になっており、照明自体の装飾性や美しさという視点が十分でないように感じます。

また「天井照明で照らす」ということがいまだに主眼に置かれており、天井照明のバリエーションは多くても、テーブルランプやブラケット照明(壁付照明)のバリエーションは驚くほどわずかです。
カタログを見ていても、天井照明のページが20としたら、テーブルランプは0.5くらいの薄さで寂しい状況です。

「海外のようなインテリアを叶えたい」というお客様のニーズには、日本のメーカーの照明では叶えることができません。

きつい言い方で申し訳ありませんが、日本の大手照明メーカーが出している照明はどこも同じような機能・デザインが多く、個性をほとんど感じません。
これは照明だけでなく、壁紙やカーテンなどにも言えることです。
みんな似たようなもの(一番売れるもの)ばかり出すので、大体ラインナップが同じなのです。

「どのメーカーも同じ金額で似たようなものを出していて、メーカーが複数ある必要があるのか?」これは別業種からインテリア業界に入った私が、一番初めに感じた素朴な疑問でした。


…というわけで、インテリアデザインで照明の提案をする際は、装飾性の高い海外の照明を提案したり、日本のシンプルな照明+海外の照明を組み合わせて提案することが多いです。

最近国内の小さなブランドやメーカーでオリジナリティある照明を出して頑張っているところもありますので、ぜひそういうところも応援していきたいと思います。


最後にわくわくする美しい照明をご覧ください

2020年1月にドイツに行き、ケルン国際家具見本市 (imm cologne)に行ってきました。
ワクワクする美しい照明がたくさんありましたので、ぜひ目の保養にご覧ください。


スペインの照明ブランドAromasのブラケットライト(壁付照明)。ワイヤーや麦など様々な素材を組み合わせて作られています。スペースが限られるマンションにこそ、このようなデザイン性の高い壁付照明をぜひ取り入れたいですね。

Studio del Solケルン家具見本市

フランスのPetite Friture(プティット・フリチュール)。
アイコニックな傘のような照明。
ヨーロッパでは人気で、お店やカフェで良く見かけました。Studio del Solケルン家具見本市

ベルギー ブリュッセル空港のカフェでも発見↓

ベルギー空港で見つけたおしゃれな照明コーディネート

イタリアの照明ブランドのブースでは、多種多様なガラスのシャンデリアが展示されていました。戸建ての階段の吹き抜けなどに取り入れたいダイナミックな照明が多数↓

ブラケット照明ケルン国際家具見本市



その他、各ブースで目に入った美しいシャンデリアたち


一部のご紹介ですが、様々なバリエーションに驚きます。
照明には無限の可能性があります。

天井高など空間スケールの観点、また地震などの観点などにより、日本の住宅にそのまま応用するのは難しい場合もあるかもしれませんが、世界には美しい・面白い照明がたくさんあって、そういうものを取り入れるチャンスがあるということをぜひ知っていただきたいですし、私も積極的に提案していきたいと思います。

インテリアデザイナー山口恵実
Art & Interior Design, Studio del Sol
外資経営コンサルタントからインテリアデザインの世界へ。アートやインテリアの楽しさと奥深さに気がついてから人生が変わりました。
2022年ロンドンへ留学。Interior Design School, Professional Development Course卒。
東京都内に築37年のマンションを自邸用にリノベーション。自邸インテリアをinstagramで発信中
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